“暮らしの美”と“夢二のロマン”を探して岡山、東京、伊香保の3つの美術館を訪ねました。 温故知新、私たちの暮らす“地域”や“夢二”に興味を持つきっかけとして、 心地よい暮らしのヒントになりましたら最良です。

02 時かける、美しいもの、可愛いもの、儚いもの

竹久夢二が作った暮らしと美のロマン
(ひと手間6号に掲載)
取材協力/夢二郷土美術館(岡山)・竹久夢二美術館(東京)・竹久夢二伊香保記念館(群馬)

(写真左)千代紙「椿」〈竹久夢二美術館 所蔵〉/(写真右)Mai『婦人グラフ』1926年(大正15)5月号表紙〈竹久夢二伊香保記念館 所蔵〉

温故知新・美術館で夢二のロマンを感じてみよう

今回、3つの美術館を訪れて新鮮に感じたこと。それは夢二にとって、“暮らしの美” は永遠のテーマだったことです。日常に芸術を取り入れる風が吹いた明治から大正への移行期、人々は新しい感覚の美を身に纏います。1909年(明治42年)刊行された『夢二画集 春の巻』で人気を決定的にした夢二は、1914年(大正3年)「港屋絵草紙店」を東京・日本橋区呉服橋東詰に開店。“趣味のよい暮らし”への憧れる時代の空気、“美術・芸術は生活と結びつけて初めて価値が生ずる”夢二の概念が相まって、エポックメーキングな試みになりました。  この店で「日本の娘さんたちに向きさうな」女性のための「美しいもの 可愛いゝもの 不思議なもの」を夢二自らデザインして販売まで行います。心ときめく、半襟・羽子板・人形・絵草紙などの生活雑貨は夢二ファンのみならず、若い女性の琴線に触れ、人気を博しました。また、著名人も大挙して来訪。その盛況ぶりから、東京名所として認知されるようになりました。今回は、そのような“暮らしの美”の作品を各館のご協力により掲載、ご紹介させていただきます。そして当時、「夢二式」と呼ばれた独特な世界を作り上げた、竹久夢二の実像に、少しでも近づきたいと思い、取り上げさせていただきました。

よく知られた美人画だけでなく、雑誌や書籍の挿絵、可愛らしい雑貨などの暮らしに根ざした作品群を知ることができました。同時に作品に込められた夢二のメッセージも知ることができました(竹久夢二美術館・東京)

小誌「ひと手間6号」の一部。誌面上にて見聞きした夢二の足跡をご紹介しています。

3つの美術館を訪ねました

(1)【東京・文京区本郷】にある竹久夢二美術館。都内で唯一、夢二作品を鑑賞できる美術館では古き良き時代を思わせる〈夢二式美人画〉から、モダンな表現を試みたデザイン作品まで、幅広く大正ロマンの世界を体感することができます。(2)【群馬・伊香保】にある竹久夢二伊香保記念館。夢二研究の第一人者、長田氏から譲り受けた作品を収蔵、展示し、伊香保を愛した夢二の心と郷土美術の振興に役立てたいという志で建てられました。(3)【岡山】夢二郷土美術館本館は年4回企画展を開催。三千点余に及ぶ所蔵作品を中心に常時100点以上の夢二作品がご覧になれます。邑久町には夢二が16歳までを過ごした築約250年の茅葺屋根の生家があります。至近に夢二自らが設計、1979年に次男・不二彦氏の監修のもと復元された少年山荘もあります。

私たちの暮らす岡山、郷土出身の夢二を知るきっかけを学びました

 今回の小誌「ひと手間」は弊社創業100周年を迎えることができた地元への感謝の気持ち、そして、郷土をより深く知るために3つの美術館のご縁を賜り、岡山・東京・群馬(伊香保)の館長様、理事長様、学芸員皆様のご協力により、学びの世界へと誘ってくださり、ここにご紹介させていただくことができました。御礼を申し上げます。いままで「美人画」のイメージばかりだった夢二の印象は大きく変わり、市井の暮らしを大切に描かれた詩画に大きく感銘いたしました。ぜひ美術館にお出かけください。今までと違う感動が待っていると思います。  なお、ご来店、もしくはお申し付けくだされば、「ひと手間」をお渡し、またはお送りさせていただきます。私たちの暮らす地域や夢二に興味を持つきっかけとして、そして心地よい暮らしのヒントになりましたら幸いです。
シライホーム ・ 株式会社白井組 代表取締役 岡本営松

東京の弥生美術館
竹久夢二美術館前にて
竹久夢二伊香保記念館にて
伊香保記念館の塩川理事長様と一緒に。
ご多忙にもかかわらず、誠にありがとうございます
夢二もかつて訪れたという
歴史ある伊香保の岸権旅館にて
竹久夢二伊香保記念館の敷地内にある
義山楼(ぎやまんろう)
竹久夢二伊香保記念館の広大な
敷地も見学させていただきました

小冊子「ひと手間」をご覧ください

 まったくの初心者が訪ねた、奥深い「夢二」の世界。学ぶことで知識の密度は上がり、愛着はさらに増します。各美術館の学芸員の皆様には多くのお力を賜り、心よりお礼申し上げます。ありがたいことに、竹久夢二伊香保記念館の木暮館長は、「知識より感じることが大事」とご教授くださいました。夢二郷土美術館の館長代理・小嶋さんは、「郷土と夢二を繋ぐ企画展のみならず、こども学芸員の活動や有名デザイナーとの協調など、次の時代に向けた取り組みを行っています」と、心躍るプランを教えてくださいます。新しい時代を迎えたこの時期、ぜひご自身で触れて感じてみてください。散歩がてら、それともいつかの旅に、美術館を巡る計画を加えてみるのは掛け値なく楽しいと思います。そう、取材終わり、竹久夢二美術館の石川さんに興味深いことを教えてもらいました。「特に男性ファンが夢二の生き方、残された言葉に共感して、聖地巡礼など足跡を辿る旅に出る方も多いんですよ」志半ば50歳を前に旅立った夢二の言葉や思いは変わることなく、現代社会を生きる私たちに、強く、遠く響いています。(了) (写真上)〈撮影協力・竹久夢二伊香保記念館〉/(写真下)〈撮影協力・夢二郷土美術館〉

[ 取材協力・写真・資料提供 ]
夢二郷土美術館(岡山市/瀬戸内市)
yumeji-art-museum.com
竹久夢二美術館(東京・文京区)
yayoi-yumeji-museum.jp
竹久夢二伊香保記念館(群馬・渋川市)
yumeji.or.jp

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  • 01 白井組を支える技と職人たち
  • 03 時代を超えて存在する唯一無二のテーブル
  • 04 夢中な人に会う旅